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私が反射的に目をつぶると、バシッと鈍い音がして、私の前を誰かが通った。
………私の頬はなんともない。
目の前を見ると、背の高い後ろ姿が目に入ってきた。
「俺の連れになんか用ですか?」
後ろ髪の短い男。
男はそう言い、私の体をすっぽりと隠した。
「いや……。」
庄治の声がしたかと思うと、もう庄治の姿はどこにもなくなっていた。
その代わりに、背の高い大きな男が。
「大丈夫?」
太陽で反射していた顔が不意に現る。神々しいくらいまぶしかった。
整った顔立ち。
少しかすれた低い声。
そして……
左腕に、何か…違和感。
「…………。」
私は男の腕をじっと見つめた。
「アズサって言うの?」
男が口を開いた。
「うん。……ねぇ、お金もってる?」
何を血迷ったんだろう。
私はその男に、3万で買えと、そう告げていた。
彼は顔色ひとつ変えない。
「いいよ。俺の家でいいなら。」
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