10.幸せのカタチ

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デパートの洋服売り場で、アクセサリを見物する客たち。 「パパぁ、これ買ってよぉ。」 と高校生の不気味な声が聞こえる。 「しょうがないなぁ。」 また男も、彼女の言うことを聞いていた。 そのなんとも言えない光景は、私にとって、この世の終わりにも見える。 以前の私を重ねていた。 「アズ~…決まったの?」 「あ、ごめんごめん。」 寛斗の声で、我に返った私は、自分で決めた洋服を手に、レジへと向かった。 私は出会ったころの、寛斗と同じ歳になり、子供も4歳と2歳の、女の子と男の子をもうけていた。 寛斗は相変わらず、くだらないことで、私と子供達を笑わせてくれている。 左腕の器具は手放せないけれど、不自由ではなかった。 寛斗はあれから、記憶力が良くなり、なんでも覚えてる。 正直、忘れていいこともあるけれど。 ただ、彼は夫としても父親としても、申し分ないくらいの愛情がある。 私は普通の幸せを得た。 ううん、それ以上だ。 それは時に不安になる材料でもあり、元気になれる、魔法のようなものでもある。 そうやって、私を惑わすけれど、そんなふうに日々を重ねて、愛はまた、深くなるのだと、彼らが教えてくれる…。 いつかきっと、あの高校生も、私のように本当のキスをできる日が来るといい。 いつかきっと、思い出す時がくる。 本当の愛を。 《完》
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