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「つまりさぁ。
なんでこんなダメ男が僕より指名多いのかわかんないって事!」
「なんだ、お前先月の事まだ根に持ってんのか」
「はぁ!?
そんな訳ないじゃん!
ただ僕は理由がわかんないって言ってるだけだし!」
ぐだくだ並べられた文句の真意はなんなのか、と問う前に回答はあっさりと投げ付けられた。
そうか。
そんなに悔しかったのか、この間の賭けに負けたのが。
前振りは長かったが、言いたい事は良くわかった。
つまりただの八つ当たり。
先月指名が多かった方が牛丼一杯奢るだけの事だったじゃないか、それをいつまでも大人気ない。
さっさと帰り支度を終えて。
さっきまでの甘い雰囲気を裏を返す様に苦々しいものに変えたソイツは、今だベッドに寝そべったままの俺を頭上から憎々し気に睥睨している。
まぁた始まったか。
この気分屋女王様の癖が。
「お前に分からんのに俺に分かる訳ないだろ。
俺は枕やってるつもりはないし、俺から誘った事も無ければ、抱いてやるから店に来いなんて言った事もない。
遊んでくれってわざわざ足開きに来るのは向こうだろ。
据え膳食って何が悪い」
どんなきっかけだか知らないけれど、突然機嫌が悪くなる癖のあるコイツ。
店でお互いバイトとして出会って1年、最初は意味なく睨まれているのか単に嫌われているのか、と腹が立ったりもしたけれど、大分性格を知っ今としては、それなりに対処方位は身につけた。
敢えて冷静に、淡々と自分の言い分を言う。
するとどうだ。
「誰も大樹がルール違反してるなんて言ってない…。
大樹に遊ばれたって誰も大樹を怨んだりしてないし、皆大樹とは一回きりだってちゃんと割り切ってる。
皆に良い顔して優しくして、誰にも興味を持たないし本気にもならない大樹。
可愛いだけで頭も悪い僕なんかがありとあらゆる所で敵わないなんて本当は分かってる」
途端に、大人しくなる。
が、しかし。
わかっていてもコイツのこの性格と支離滅裂な話し方、疲れるな。
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