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「じゃぁ、また賭けるか?」
怒り心頭と言った感じからまた一転、今度はしゅんと萎れてしまったソイツに、暫しの沈黙の後、のそりとベッドに起き上がって胡座をかきながら口を開いた。
「ぇ?」
一瞬、何の事か、と首を傾げるソイツ。
「丁度月変わりだしな。
条件は前と同じで良いよな。
期限は〆日まで、友達は呼ばない。
ついでに、俺はその間誰とも寝ない。
他には?」
「…ない」
それならフェアだろう、と最後に条件をひとつ付け加えてソイツを見据えてにやりと笑むと、腕を組んで唇に指を当てて考える仕種をした奴が暫しの後、こくりと頷いた。
「ない…けど、」
「ん?」
「勝ったら翡翠楼の小籠包」
「小籠包?」
「うん。
牛丼はもう良いや」
漸く機嫌が直ったのか、ソイツが上げた顔の萎れた表情を柔らかく変えて、小首を傾げてにこりと笑む。
前の賭けの対象になった店の近くに出来た新しい牛丼屋は、どうやらこの女王様にはお気に召さなかったらしい。
まぁ、確かに不味かった。
新規オープンで客の入りも多かったから期待半分で入ってはみたけれど、不味い上に店員は無愛想。
期待外れも甚だしかった
。
「決まり、だな」
対して翡翠楼は店の向かいにある中華飯屋で、多少割高だが激旨で有名だ。
あそこなら俺も文句は無い。
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