9/24
前へ
/153ページ
次へ
. 「うっせーぞ、お前等」 彼等の野次を受けて教室に入って来たその人を目にした時、僕は軽く驚いてしまった。 少しムッとした、けれどバツが悪そうにくちびるを曲げて皆の方へ歩み寄るその人は紛れもなくさっき中庭で眠っていた彼で、かけられる言葉にひとつひとつ返事をして自然とその輪の中に混ざっていく。 「定期はぁ?」 「貰って来た」 「どこ行ってたの?」 「その辺」 「そーだよお前、鞄あんのにいないしさぁ」 「早く来過ぎたんだよ」 「大樹馬鹿すぎー。 てかウチら全員同じクラスってちょーラッキーぢゃない?」 「でも松井だけ隣だってよ」 同じ1年で同じクラスだったのか。 あの堂々たる眠りっぷり、てっきり上級生かと思ったとその人を眺めていると 「1中の嶋村。」 「ぇ?」 「幸也知らねーの? あの顔」 「…うん」 知らない事の方が信じられない、と言った顔をして三津木が僕を見ていた。 そうか。 彼の名前は『嶋村大樹』 .
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3338人が本棚に入れています
本棚に追加