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月日は光陰の如く半年後。
冬もすぐそこに迫ったある日。
「幸也ってさ、嶋村の事好きなの?」
「…は?」
教室で、僕と向かい合わせて弁当を食べていた三津木が突然、そんな事を言ってきた。
「違う?
幸也、嶋村の事ずっと見てるし、てっきりそうかと思ったんだけど」
「そっか、三津木幸せボケで視界がピンクなんだ」
一瞬、どんな戯れを言っているのかと首を傾げたけれど
また次の瞬間、三津木がこんなふざけた事を言い出す事への心当たりを見付けて ぽん と掌を打った。
「違うって。
てかピンクってなんだよ」
そうかそうか。
幸せでよかったな、と一人納得する僕に、失礼だとでも言わんばかりに三津木が頬を膨らませて見せる。
「三津木が変な事言うからだろ」
三津木は中学の時、同じ学年に付き合ってた人がいて、卒業と同時に学校が離れてしまうからって理由で揉めて一度別れて。
けどついこの間、拠りを戻したばかりで。
遠距離だけど最近の三津木は凄く幸せそうだったから。
だからきっと、他人の事もそう恋愛絡みにばかり見えてしまうんだろう。
色ボケだ。
きっとそうだ。
「でも見てる。
ほら、今だって」
「嶋村は目立つから目が行きやすいんだよ」
話題に上れば嫌でも目が行くだろうと言おうとしたけれど、絶対そうだ、好きに違いないと言いた気な三津木の熱い視線に些かたじろいだ僕は、此処は穏便に会話を済ませて仕舞おうと台詞を変えた。
「大体、嶋村は男だろ?」
「男だから何?
恋愛対象にはならない?」
「普通はね」
「俺と聡の事知っても引かなかったじゃん」
「それは他人事だから。
期待に添えなくて悪いけど僕はストレートだよ」
「幸也は絶対ネコ」
なのにどうして…
「根拠が無い。
大体、男どころか女の子だって好きになった事、」
「嶋村の事好きな癖に」
「だから、」
こうも堂々巡りになるんだ?
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