3338人が本棚に入れています
本棚に追加
.
「もしかして俺、邪魔した?」
「…ぃゃ、べ、つに」
いつまでも答えず固まった侭黙っていた僕が、嶋村が来た事を不快に思っていると思ったのだろうか。
怪訝な声をした嶋村が覗き込んで来て、僕は更に緊張してしまって。
やっとの思いで答える言葉も切れ切れになってしまう。
「そっか。
御剣、今帰るとこ?」
その切れ切れになった言葉を、それでも聞き取ってちゃんと理解してくれたのだろう、嶋村は僅かに微笑むともう一度同じ事を聞いてきた。
「ぁ、ぅん。
本…」
「返すの?」
今度は早く返事をしなければと気が焦るけれど、必死に絞り出した言葉はたったそれだけ。
「…、ぅん」
「話し、あるんだけどさ。
待ってて良い?」
「…、ぅん」
一体、嶋村が僕なんかに何の用があるんだろう。
まともに話した事もないのに。
不思議には思ったけれど了承のつもりで頷くと、嶋村が嬉しそうに笑った。
.
最初のコメントを投稿しよう!