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尻ポケットの左右に携帯と財布。
それから、左手に'それ'を抱えてリビングからまた玄関へと向かう。
『あっ!…ぁ、んぅ…』
『ゃ…、ぁ
ぁ、ふっ…っ、ダメ…でちゃ…っ!』
足を進める度、2人分の艶を帯びた声と荒い息遣いが耳を穿つ。
慣れてる筈なのに…こんなの。
こんな事。
何度だって見てきた。
何度も聞いた。
なんで今更、こんなに悲しくなるんだろ。
寂しい、淋しい、さみしい。
…虚しい。
…空しい。
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