極上の贄

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   ドクドク、と忙しく動く鼓動が意識を覚醒される。そして意思とは裏腹に身体は強張って硬くなり、息が浅くなる。  緊張で身を強張らせる美癒。  そんな彼女をあざ笑うかのようにそのとき、風が吹いた。 「――ッ!?」  頬を撫ぜる風。その生々しい冷たい感触に、美癒は飛び上がる。  ざわざわ、と木々の葉が不気味な音を立て、彼女の挙動をあざ笑う風は、ただの風だ。  そう、内心を誤魔化すように美癒は眉間に力を寄せた。  ……だけど、本当に、夢なのだろうか?  ずんっと重い何かが胸を叩く。  
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