極上の贄

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   ひやり、と汗をかいた肌がべとついて気持ち悪い。  夢を見ているのだと思っていた。疑いもなく、そう。だけど、余りにも生々しすぎやしないかと不安に思った。  ――意識しすぎだ。  美癒は頭振って、否定する。そして今一度、ぐるりと周囲を見渡した。  変わらない、真っ暗な森が視界に映りこむ。  生い茂る木々。伸びる枝。  生い茂る葉は頭上を遥かに越し、覆い被さって夜空を窺わせない。  月明かりも星の瞬きさえ遮る森は、冷え冷えとした空気を漂わせ、土の香りと緑の匂いが鼻腔を深くくすぐる。  
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