極上の贄

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   うねうねとした伸縮を繰り返しつつも、木々の間に茂る葉を荒らし、茂みを掻き分けて来る。  液体でもない。固体でもない。表現できないぬっとりとした黒い塊の“ソレ”。  美癒が凝視する中、“ソレ”は茂みから這い出して、美癒へと足を向けた。 「――ひぃ」  その意志のあるその行動に鳥肌が立ち、次の瞬間には、地面を強く蹴って駆け出した。     ......  ――逃げなくちゃ!  悲鳴が喉に張り付き、ドクンと跳ねた鼓動。  本能的に、美癒は狙われている、と悟った。  
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