プロローグ

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   目の前で、柔らかな果実が握り潰された。  飛び散る滴が私の頬に付着する。濃厚な香り周囲に充満し――胸が詰まった。     .....  ……気持ち悪い。  むしゃむしゃと“ソレ”を咀嚼する彼。  ついさっきまで、生きていた“ソレ”。  恐怖に縛られて、悲鳴さえも上げられなかった私の目の前で“ソレ”は息絶えた。  そして、彼によって引き千切られる。いや、彼はただ、“ソレ”の腕に触れただけだ。  なのに、ぐにゅと“ソレ”の腕がもげる。  そして、ぼとり、と呆気なく左腕が地面に落ちたのだ。  
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