プロローグ

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  「…………ふん、やはり口に合わんな」  乱暴に口元を腕で拭って、彼が顔を上げた。  食事は終わった、とでもいうように“ソレ”を乱暴に投げ捨てる。そして、私を見た。  紅玉の双眸が私をひたと見据えて、彼は艶やかにも輝く濡れ鴉の髪を乱暴に掻き揚げ、笑った。 「それに比べておまえは、美味そうだ……」  とろん、と陶酔してそうな瞳で私を見つめる彼。  そして、悠然と一歩足を踏み出して、私へと近づいてきた。  ひぃ、と呼気が喉で鳴る。  ガタガタ、と震えて力が入らない身体。  ――動いて、動いて動いてっ!  
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