686人が本棚に入れています
本棚に追加
「…………ふん、やはり口に合わんな」
乱暴に口元を腕で拭って、彼が顔を上げた。
食事は終わった、とでもいうように“ソレ”を乱暴に投げ捨てる。そして、私を見た。
紅玉の双眸が私をひたと見据えて、彼は艶やかにも輝く濡れ鴉の髪を乱暴に掻き揚げ、笑った。
「それに比べておまえは、美味そうだ……」
とろん、と陶酔してそうな瞳で私を見つめる彼。
そして、悠然と一歩足を踏み出して、私へと近づいてきた。
ひぃ、と呼気が喉で鳴る。
ガタガタ、と震えて力が入らない身体。
――動いて、動いて動いてっ!
最初のコメントを投稿しよう!