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「痛いです。痛い……!」
「大丈夫ですからねー、動かないでくださいねー」
いやいや、全然大丈夫じゃないから!
痛みに身を捩ろうとした私の体を、看護師さんたちが押さえつけます。
痛い。嫌だ。痛い。
それはまるで、兄に押さえつけられて体をまさぐられていたあの忌まわしい瞬間の再現のようでした。
克服したはずの傷が、一気に開くのを感じました。
そしてその傷は、私の中にいっそう深く刻まれることとなりました。
手術が終わり、私が病室に戻るまでの間に執刀医は夫にこう言ったそうです。
「麻酔を倍量使ったけれど、うまく効かなかった。途中で目が覚めてしまったけれど、ご本人はそれを覚えていないかもしれないです」
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