1.爆弾発言

3/29
前へ
/236ページ
次へ
  「ただいま~……あ~、あったけ」  俺の家の中に入る。雪の家はすぐ隣だけど、一緒に俺の家に来る事になった。 「おぉ、おかえり雪ちゃん」  リビングでテレビを見ていた父さんがそう言ってくる。念のため言っておくけど、俺の父さんだ。でも俺より雪の事を気遣ってる。  俺と雪はまっすぐ2階へ上がり、俺の部屋に向かった。  俺の部屋…… 「……何だこれ」 「何もないです……」  ちょっと待て、何が起きた? どうして俺の部屋がきれいさっぱり片付けられてるんだ?  いや、これは片付いてるなんてもんじゃない。何もない。空っぽだ。ベッドすらなくなってる。 「あ~、そうそう、お前出てけ」 「は?」  階段を上がってきた父さんに言われた。何? いきなり親権放棄だと? 「荷物は全部運んだからな。雪ちゃんの家に」 「ほぇ?」  雪の惚けたような声が聞こえてきた。隣で雪は首を傾けて父さんを見ている。 「うん、だから、同棲しろって、そろそろ」  うん、そうだよな。そろそろ…… 「はぁぁぁぁああ!?」 「だから、お前今日から雪ちゃんと暮らせ。って事にしたいんだけど雪ちゃん良いかな? もちろん家事は全部こいつがやるから」 「ちょっと待て何勝手に決めてんだ!」  何だこの状況は! 同棲? 同棲ってあれだよな、俺と聖みたいに性別が同じの……いやいや、え~っと……雪と同棲!?  一緒に住むって事……だよな? 「えぇっと……その、真?」  雪がそう言って俺の方を見た。さっきまで寒さで白くなっていた顔が、ほんのりと赤く染まっている。 「よろしく……おねがいします?」 「あぁいえいえ、こちらこそ……」  雪が深々と頭を下げてきたので、思わず俺も同じ事をする。  …………  ……マジですか?
/236ページ

最初のコメントを投稿しよう!

582人が本棚に入れています
本棚に追加