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俺はリビングで椅子に座り、ニュースを観ている。風呂場からはシャワーの音が聞こえてくる。
濡れた髪を触ってみる。何かあんまり覚えてない。風呂に入る事でこんなに緊張する人も少ないだろう。
だってほら、雪の家の風呂だぞ? 考えてみれば初めて……いやまぁ子供の時はあったけど。なんか……ねぇ?
そういえばいつか聖が雪の家に泊まった時あいつも入ったんだよな……明日殴っとこう。
「真っ!」
リビングの入り口からそう呼ぶ声がしたので視線をテレビから離す。いたのは、ドライヤーを持った雪。真っ白なパジャマを着ている。
「髪の毛、乾かします!」
「ん~、良いけど……って、俺の?」
「はい!」
見てみると雪の腰まである長い黒髪はもう乾いている。
「いや、別に良いよ。そんなに長くないし放っとけば乾くから」
「ダメです! 風邪引いちゃいます!」
雪がそう言って俺の後ろに立った。濡れた髪に触れ、ドライヤーを近づける。……けど。
「コンセント繋がないと動かないかと」
「ほぇ? あっ」
気付いた雪が壁のコンセントまで小走りをする。たまにこういう事があるんだけど……うん、和む。
「真、かゆい所はございますか?」
雪がドライヤーを当てながら訊いてくる。美容師の真似みたいだ。
「ん、別に大丈夫」
「え~……本当にないですか?」
「うん、特に」
「本当ですかっ?」
「だから別に……って熱い熱い!」
「あっ、す、すみません!」
雪が慌ててドライヤーを離した。あ~、後頭部が焼けてる感じがする……
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