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次に目を開けた時、少年はただ起動したんだって思った。
おはよう、とピンク色の髪をしたご主人様が目の前にいる。
おはようございますご主人様。僕はこれから何をすればよろしいでしょうか?
少年の虚ろな瞳が答えた。
イイコだねぇ、と博士は言った。
好きにしたらいいよ。オレはしばらく出掛けなければならないから、イイコで居れば何をしても構わないよ。
わかりました。
少年は機械的な声で答えて、その場に座った。
何もしない時間がずっと続いた。
それでも少年は何も言わずにただ黙っていた。
沈黙の時がずっとずっと続く。
それでも少年はまだ黙ったままだったんだ。
どれだけ経ったかなんてことは少年には関係のないことだったんだ。
ただ、博士が何をしても構わないと言ったから。何をすれば言いかなんて自分には分からないことだから。
馬鹿ねぇ、と何処からか声がした。
くるりと首だけ回してみると、そこには此処で初めて会ったお人形さんの姿があったんだ。
どうしてそんなことを言うのですか?
少年はそう尋ねるんだけど、その表情を見てお人形はまた笑った。
微笑ではなく、嘲笑だった。
はぁ、どうしてこんなものになりたがるかがさっぱり理解できないわ。貴方は人間だったのでしょう? 人間の方が今の状態よりもっと楽しいに決まってるじゃない。
人間は自由よ。なのに貴方は自分からそれを捨てて博士の玩具になった。本当にそれでよかったって言うのかしら?
少年は黙った。
どうすればいいのか解らなかった。
この人形は博士に嫌悪しているのか?
博士に造ってもらったことを喜んでいないんですか?
少年はそう尋ねた。
その言葉に、お人形はまたカラカラと笑った。
造ってもらったことにはとても感謝しているわ。
でもね、私はあいつが嫌いで仕方ないの。貴方には分からないでしょうけれども。
私はあいつを殺したい。そうしたら、私は人形だけれども自由を得られるわ。それは人間になるってこと。そう思わない?
きっと素敵なことなのよ。
お人形が言い終わったときそれが起こったんだ。
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