機械になりたい少年

6/8

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
 はい、博士のことを嫌って、殺そうとしていたので、金属の棒で殴りました。  そうだったのかぁ、お前は本当にイイコだね。  それにしては元気が無いようだ。  何か困ったことでもあるのかい? 何かあればオレに言ってごらん。何でも望むことを叶えてあげよう。  少年はしばらく黙った後でこう言った。  出来るなら、この自分を殺して欲しいと。  自由を与えられても、自分で考えられずにただ死を待つだけの自分を。  それは出来ない。そう言ったらどうするんだい? 君は。  自分で死ぬ場所を探して死にます。  少年ははっきりとした声で言った。そこには不思議なことに 虚ろだった瞳はなくて、澄んだ眼をした少年が立っていたんだ。  ならオレが、やってやるよ。少年。  一発の銃声。それが全てだった。  少年はその場に倒れ込んだ。即死だった。  まだ、温もりを残した身体だけが床には残っている。  その床に広がって流れる液体は赤かった。  それは少年が人間だったと思える、ほとんど唯一と言っていいくらいの証拠だった。  あーあ、仕方ないなぁ。どうして自我を消したはずなのにあんなことを言い出すのかなぁ……失敗だったかな。  博士は一人でぶつぶつと言っていた。  せっかく、綺麗なお人形が出来たと思っていたのにな。  もったいないなぁ。どうしよう。……そうだ! 身体は綺麗なままだ。それなら脳だけ造ればイイよねぇ。 →
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加