機械になりたい少年

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 どうだったかい? あぁ、なんだか不気味な話だったねぇ。怖かったかい? ごめんねぇ、そんな顔をしないでおくれ。  ほら、綺麗なお花をあげよう。これをお母さんにあげなさいね。  今日話したお話が本当の話かって? さぁ、それはどうだろうねぇ? なにせボクは道化師だよ? 道化師が本当のことばかりお話するかな? それは君がじっくり考えて答えてみてごらん。そのときは答えてあげよう。  さぁさぁそれでは皆さん。ボク達サァカスは今日をもってこの街とはしばしお別れです。またいつか此処に来たときに新しいお話、また聞きたいお話をしてあげようね。またね」 「あれあれ、さっきの女の子だね? どうしたの? 不安そうな顔をして。  なになに? あのお話の少年はボクじゃないかって? ははは、面白いことを言うね。どうしてそう思うんだい?   ははーん。仮面から見える眼が碧だから。 そういうことかぁ。でも君の推理は残念ながらハズレだよ。ボクはあの少年じゃないんだ。  ほら。君にだけ特別に、仮面をはずしたボクの顔を見せてあげよう。  傷が痛そう? あ、この傷のことだね。大丈夫だよ。とても昔に出来た傷だ。君くらいの時にね。まぁ、ボクにはボクの波瀾万丈な人生ってモノがあるのさ。  あー泣かないでおくれ。泣かれるとどうすればいいのかわからなくなるんだよ。お願いだ。イイコだから。ね?  そういえばさっきのお花を家に持って帰ったかい? そうか、お母さんも気に入ってくれたんだね。良かった良かった。  それならそうだな……さっきのお花の種が何処かに……おっと。あったぞぉ。この袋に入っているから、春になったらお庭に蒔いてみなさい。虹色の花が夏に咲くはずだから。  それじゃ、うあ、本当に急がないといけない! お嬢ちゃん、また会える日を楽しみにしているよ。じゃあ、またねぇ」   サァカス サァカス またいつか   君に一時の幻夢を与えよう   さぁさぁ また会えるときまで   はりきり生きよう 懸命に               fin
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