公務員の男

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劇場に着いて他愛も無い話をしながら上映を待つ。 私は心の中で『やっぱり来るんじゃなかった…。』とか『見たかった映画だし自分の世界に入って見よう!』とか失礼にも相手を無視して考えてた。 暫くすると辺りは暗くなり上映がスタート。 映画が始まって直ぐにゾッとして鳥肌が立った。 見ていた映画がホラーだった訳じゃない。 ましてや、霊的な現象が起きた訳でもない。 肘掛けに乗せていた私の手を公務員が上から握ってきたからだ。 振り払う事も出来ず、ただ我慢して映画を見続ける。 すると何を思ったのか公務員は私の顎を捕らえて顔を寄せてきた。 そう、キスしようとしてきたのだ。 軽くパニックに陥る。 『無理!気持ち悪いっ!!』とか『映画見たいのにぃ~!!』とか… とりあえず、必死の苦笑いで捕らえられている顔を力一杯背けて公務員の鎖骨辺りを押し返す。 「恥ずかしいから…」 「暗いし誰も見てないよ。」 誰か見てっ!助けてっ!! 映画中、本気で叫びそうになった。 2、3度そんな押し問答を繰り返して公務員は諦めてくれた。
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