529人が本棚に入れています
本棚に追加
「…………。……血を……絶やさぬこと……でしょうか」
その答えに薫は眉を寄せた。
納得したような、そうでないような……もやもやと霧が掛かったような気分になった。
もしかして、訊いてはいけなかったのかもしれない。自分はそこまで踏み込んではいけなかった?
「……始祖の血は確実に受け継がれています。今は、本家の嫡男が盟約を継ぐことになりますね」
目を開けた鶸は、薫を真っ直ぐに見た。
「…………鶸さんは、本家の人じゃないんですか?」
まるで自分は本家とは関係ないと、他人事のように聞こえた。
本当にこの子は……、と鶸はぽつりと呟いた。
(妙なところで鋭い)
「…………私は本家の人間ではありませんよ。──ところで、日本には妖怪と呼ばれる者が存在していますが……私達は彼らの退治も請け負っています」
薫の知るいつもの鶸にすっかり戻ったかと思いきや、彼女は飛んでもないことを言い出す。
「妖怪は何も、夜の生き物とは限りません。一般的に動物と同じです。…………因みに、貴女の学校にも一匹いますよ?」
「……………………へ?」
薫は固まった。
……今、何と?
「若い子は元気ですねぇ。朝覗いてみましたが、春休みだというのに部活動ですか~。妖怪も頑張ってましたねぇ」
暢気に話し続ける鶸に対し、薫は混乱していた。
今、学校にいるって……妖怪が? …………何で?
薫は遂に思考すらも止まった。そこへ鶸は、容赦なく薫の学校生活に罅(ひび)を入れる。
「でも、アレ……貴女のクラスメイトですね」
最初のコメントを投稿しよう!