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鶸はニコニコと何処からか耳栓を取り出し、耳に突っ込んだ。
彼女の突然の行動に、閣僚達は疑問符を浮かべた。そして──。
「いやああああ────っっ!!」
少女の絶叫が響いた。
同時に広間の壁が破壊された。
「……あら?」
鶸は耳を塞ぎながら、向かってくる残骸を首だけを動かしてヒョイッと避け、壁の方を見た。
その瞬間、薫と鶸の間を何かが通り過ぎた──いや、飛んで行った。
ベタン! と蛙が潰れたような音を立てて反対側の壁に激突し、そのままズルズルと擦れ落ちる。
そして、ヘニャ~と力無く畳にふっつ伏し、大の字のままピクリとも動かない。
「…………“天”?」
『何か』を目で追った鶸は、そこに天狗の姿を捉えた。
うう、と背後から唸る声が聞こえた。薫の絶叫が止んだようだ。後ろを見ると、耳を塞ぎ何やら悶えている閣僚達がいた。
「あらあら」
大変そう。
鶸は愉しそうにそう思った。
「……み、耳が……」
「頭が……」
「……うう……」
「…………」
一人は死んでいた。正確には死んだように仰向けに倒れていた。薫の絶叫は死人をも蘇らせる呪術にもなりそうだ。
「“天”! 見損なったぞ!」
広間から中庭を楽しめる程、大きな穴が開いた壁から一つの声が聞こえた。
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