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「じゃ、頑張って生き延びて下さいね?」
「はい?」
何とも不吉なことを言うなり、「バイバ~イ!」とすかさず鶸は道を下って行った。
彼女の隣にいた小さな女の子も薫に一礼し、ふわふわと鶸を追って行った。
「……え? ……え? 生き? 道?」
薫は鶸と瑳狐達を交互に何度も見た。薫の言いたいことが何となく分かった瑳狐達は目を逸らす。
「…………あの道が正規ルートじゃ、薫よ」
公猫が答えた。
鶸が下って行く道は、ロープウェイのある道であり、深山家までの最短ルートであること。そして薫が通った道は、鶸達のちょっとした意地悪だということ。
その真意は、ただこれから行われる修行に耐えれるかどうか、試しただけなのだ──と。
(どんな修行なのぉぉ~!!)
薫は頭を抱えた。
選択を間違ったかもしれない。
◆ ◆ ◆
翌日から、地獄の修行は行われた。
高台にある深山家。
その裏にある断崖を命綱一本で登ったり、近くの滝に打たれたり、滝口にある急流を鮭の川登りしたり、隣の山を麓から山頂まで往復したり──。
それはもう薫を虐めているようにしか見えなかった。しかし、阜も薫と同じく修行に励んでいたので虐めではなかった。
一方、小さな生き物達はというと──。
「頑張れ~」
色んな色の旗を振って、脇から応援するだけであった。
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