第一章

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 修行を始めてから数日後、激しい筋肉痛に見舞われた薫は、阜から「情けな」と言われながらも、居間に倒れていた。  その時、テレビのニュースで奇妙な出来事が報道された。 『藤崎内閣総理大臣。 長田防衛大臣。 真鍋経済産業大臣。 新井自民党幹事長。 ──以上、四名の自宅・官邸に、大量の銀杏が届けられました。 現在取り組まれている雇用・経済政策を批難する者の仕業ではないかと思われます。 警察も悪質な悪戯として捜査を開始すると思われましたが、警察は事件としての捜査もしないと公式発表しました。(以下略)──』 「…………」  薫と阜はテレビの前で茫然と立ち尽くした。その四名とは、先日、深山家に来た閣僚達であった。  彼らの私邸に、門前を塞ぐようにしてドンと置かれた、実に迷惑な程の銀杏が贈られた。  季節外れの銀杏に、閣僚達は彼女の仕業だと直ぐに察知し、捜査をせぬよう警察庁長官に連絡するや、彼女にお詫びの品を贈ったそうな。  その後、東京のど真ん中で『季節外れの銀杏料理対決』が開催され、その銀杏は無料で国民に提供されたのだが──その間、彼らの私邸は銀杏の悪臭に悩まされることになる。
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