第二章

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   ◆   ◆   ◆  慶條(けいじょう)高校。  部活動が盛んで、幾つもの運動部や文化部では多くの賞を獲得している学校である。只、学力は平均。 「それじゃあね、薫」 「うん、また」  教室の前で千春と別れた薫は、二年三組と書かれた自分の教室に入る。  かつて、千春はクラスメイトだった。二年になり、彼女とは別々になってしまった。隣なので、辛いとかそういったものはない。しかし、クラスメイトだったということが気掛かりなのだ。 (千春ちゃんは中学から一緒だし、妖怪だなんて……ないよね) 『クラスメイトに妖怪がいる』  鶸がそう言ったあの日、薫は一年だった。ならば、一年の時のクラスメイトの中にいるということだ。  鶸の言葉が真実ならば……。  教室に入り、薫は自分の席へと向かう。薫の席は窓際の後ろから二番目。当初は最後尾だったのだが……。 「おはよう、深山さん」  机に鞄を置くと、後ろから声を掛けられた。 「おはよう、相馬君」  彼、相馬聖(そうま ひじり)が、始業式から一週間が過ぎた頃に転校してきた為、窓際最後尾という薫の楽園は崩壊した。  彼はイギリスにいたのだが、父親の仕事の事情により急遽日本に来たのだ。  父親が日本人故、サラッとした黒髪に、母親譲りの蒼い瞳をしたハーフである。出身は日本なので、所謂帰国子女ということになる。
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