第二章

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「全く……何でここにいるの」  薫は仁王立ちで瑳狐を見下ろした。目尻に涙を溜める彼は、グスグスと鼻を啜っている。 「しゃあないやん。鶸が言(ゆ)うとったんやろ? 学校に妖怪がおる~っちゅうて」  せやから……、と瑳狐は俯いていく。 「……瑳狐……」  心配して来てくれたことを知らず、怒鳴ってしまった。……謝らなければ。 「瑳狐、ごめ──」 「転校生、なかなかの美少年ですわね」  薫は固まった。  ……何ですと?  謝ろうとした矢先、頭上から声が降ってきた。声の主はふわふわと二人の下に降りてくる。 「あら、薫。授業は宜しいのですの?」  彼女の姿を認めるや、薫は再び瑳狐を見下ろした。その目に温かさはなく──。 「薫、狐は化けるんや」 「……で?」  だから何だ。つまり、嘘付きだと開き直ったということか。  その時瑳狐には、自分を見下ろす薫が鶸に見えたと言う。 「……鶸様の仰るように、妖怪の気配は致しますわね。それも近く──」 「え? ホント?」  早雪の言葉に振り返った薫は、いつもの薫に戻っていた。それに瑳狐は安堵の溜め息を溢す。 「……でも、おかしいのですわ。その気配は強くなったり、弱くなったり……こうして此処に居ても、それは変わりませんの」
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