第二章

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   ◆   ◆   ◆  力を使ったとはどういうことか──瑳狐の答えを聞いた薫は急いで美術室に向かった。  今は選択授業。  音楽、技術、美術の内、一つを選び、一組から四組までが同じ時間に授業を受ける。  薫は美術を選んだ。同じクラスの美咲、一組の恭介、二組の千春も美術を選び、同じ時間になった。  薫が駆け付けた時、美術室はしんと静まり返っていた。皆、何をする訳でもなく、適当に座っている者もいれば、茫然と立ち尽くしている者もいた。その誰もが彫刻刀を手にしていない。  髪が乱れた薫の姿を認め、美咲は目を見開く。 「薫、何処行ってたの!?」 「ちょっと……。美咲、何があったの?」  瑳狐達に会っていたなどと言える筈がない。 「千春が……千春が……」  美咲は「千春が」を繰り返すだけで、それ以上の言葉は紡がれなかった。 「彫刻刀の刃が折れて、千春の目に当たったんだよ」  見兼ねた恭介が代わりに説明した。 「彫刻刀が!? それで、千春ちゃんは!?」 「血が一杯出て……救急車で病院に運ばれて行ったよ」  薫は言葉を失った。美咲達に何も無ければ良い、そう思っていた。しかし、こんな惨事になってしまった。  これも妖怪の仕業だろうか。だとしたら、何て悪質な……。  すると、一人の生徒が一歩前に出た。 「折れたの、俺のなんだ……」  相模は握られた手を差し出した。ゆっくりと手が開かれる。掌の上には、先の折れた彫刻刀。その切り口はまるで磨かれたように綺麗だった。
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