第二章

16/94
前へ
/1004ページ
次へ
 思い立ったように狗燎が言った。え? と、小さな神々は一様に彼を見た。 「…………狗燎が?」  薫も目を丸くした。 「……まさか……お主も転校生が見たい──などと言うておるのか?」  公猫は冷ややかな目で狗燎を見た。狗燎はさっと目を逸らす。 「…………それもある」  瞬間、天天の扇が飛んできた。扇は見事パコーンと額に命中し、狗燎は後ろに倒れた。 「儂も行きたい!」  天天が高らかにそう叫んだ途端、複数の鉄拳──一つは尻尾──が炸裂した。お前が一番ダメだという容赦ない突っ込みに、天天は呆気なく敗れ去った。 「……馬鹿か、お前ら」  テーブルに頬杖を突いてテレビを観ていた阜(つかさ)は、呆れたように吐き捨てた。    ◆   ◆   ◆  それは注目の的になっていた。 「やだ、可愛い」 「ぬいぐるみ?」 「どこで売ってるんだろ」 「案外手作りだったりして」  向けられる好奇な視線は、持ち主である少女と、少女の鞄にぶら下がる一つの縫いぐるみに集まる。 (ホントに良いのかなぁ……)  少女は、ぶらんぶらんと揺れる、鞄に付けるにしては大きい縫いぐるみを心配した。  色んな意味で──。
/1004ページ

最初のコメントを投稿しよう!

529人が本棚に入れています
本棚に追加