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同時に、一台のバイクが薫の横を猛スピードで通り過ぎた。
「きゃあ!!」
それを避けようとした薫は勢い余って地面に倒れてしまった。バイクは薫を気にすることもなく、そのまま去って行った。
「薫、大丈夫!?」
「……大丈夫」
美咲は薫を起こし、服に付いた土埃を払いながら、バイクが去っていった方角を見て文句を言った。
「危ないなぁ~」
「……深山さん、膝擦りむいてるよ。これ使って」
自分の膝を見た薫は、うわっと驚く。痛々しく皮膚が擦り切れ、血が滲み出していた。
顔を顰めながら、薫は差し出された絆創膏を膝に貼った。
(……今……気配が……)
バイクが通り過ぎる瞬間、何かを感じた。狗燎は元を探そうとするが、目の前を陽射しで暖められた少々熱いアスファルトが遮る。
──痛い。熱い。
しかし、夏場でなくて幸いだ。
薫が倒れたと同時に、鞄に取り付けられていた狗燎は鞄の下敷きになってしまった。動けない為、迫り来る地面にどうすることも出来ず、顔から突っ込んだ。
(薫、早く気付いてくれ……)
彼は切に願う。
「薫、立てるか?」
「うん」
差し出された恭介の手を掴み、薫はゆっくりと立ち上がる。
「……っ」
顔を顰めた薫は足下を見た。
「薫?」
薫の様子に疑問を抱いた美咲が訊ねる。
「大丈夫、大丈夫。膝の傷が痛むだけだから」
「そう?」
痛々しい膝の傷を見た美咲は、心配しながらも納得した。鞄を拾い、薫と美咲は再び歩き始める。
「…………大丈夫かな、本当に」
「……さあな」
聖と恭介は二人の背を見つめていると、振り返った美咲が叫んだ。
「二人共~! 行くよ~!」
聖と恭介は目を合わせると、同時に歩き始めた。
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