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「シュージ、何でそんなサクサク歩けるワケ?怖くねーのー?」
「卓、怖いんだ?」
意外、と微笑うと、卓の顔は再び耳まで染まった。
「そっそんなんじゃねーよっ」
僕はクスクスと笑いながら、薄暗い室内を見渡す。
その建物の通称は『お化け屋敷』。
僕らの通う高校と同じ敷地にある付属大学の旧サークル棟で、二十数年前から使われていない廃屋だ。
「子供の頃、よくここに忍び込んで遊んだんだ」
「カナもか?こんな不気味なトコ、よく入ろうなんて思ったな」
古びた木造二階建の建物は、朽ちた木材のせいであちこちに穴やら歪みやらがあり、崩壊寸前だ。
立ち入り禁止の札とバリケードがなかったとしても、中に入ろうとする人間は稀だろう。
そう言えば、と、僕は昔を思い出し、くすりと笑った。
「カナは怖がりだから、最初は嫌がってたな」
「カナが?お前じゃなくて?」
目を丸くする卓に、僕は、そう、と言って笑む。
「もう6年位前のことだけどね」
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