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ガラクタの散乱した床を注意深く進むと、窓際に置かれた椅子を見つけた。
外回りを藪に囲まれた窓辺は、お世辞にも明るいとは言えなかったが、あの廊下よりはマシだろう。
僕はそこに香奈を座らせ、その向かいにひざまづいた。
「見せて」
しかめっ面で涙を堪えながら、香奈はその脚を僕に預ける。
僕は驚く程軽く白いそれを片膝に乗せて、傷口のひとつひとつを調べた。
「そんなにひどい傷じゃなさそうだね。でも…」
赤い血液に縁取られた掻き傷は、数こそ多いが、深いものはないようだ。
ただ、いくつかの傷にはまだ、木破が刺さったままだった。
「木の破片が入ってるよ。取らなきゃ」
「…痛い?」
それまで黙ったままでいた香奈が、今にも零れそうなほど涙をいっぱいに溜めて尋ねてきた。
僕は小さく笑う。
「じゃあ、僕の肩につかまって。痛かったら、思いっきりつかんでもいいから」
「それじゃあ、シュージも痛いよ」
香奈が心配そうにこちらを見つめる。
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