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「大丈夫だよ。だって、痛いのはカナも一緒だもん」
そう言って微笑んでやると、香奈は瞬き、それから唇を噛んで頷いた。
「じゃ、取るよ?」
「ん」
僕の肩にあてがわれた香奈の小さな手は、少し震えていた。
その背に掛かる長い黒髪が、彼女が俯くのに合わせてさらさらと零れ落ちる。
僕はなるべく傷口を広げないように、細心の注意をはらって破片に触れた。
「…っん!」
びくり、と香奈の躯が揺れ、その細い指先が僕の肩に食い込んだ。
僕は反射的に手を引っ込め、慌てて香奈を見上げる。
「ごめっ…痛い?」
香奈はぎゅっと瞳をつむり、俯いたまま首を横に振る。
普段は横柄に振る舞っている僕の妹は、本当はとても怖がりで泣き虫だ。
今もきっと、とても我慢しているのだろう。
「早く終わらせるから」
あやすように言って、僕はもう一度その傷に触れる。
「つ…っ」
痛みを堪える香奈の声が、薄暗い部屋に密やかに響いた。
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