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僕は、その衝動を押さえ切れなくなった。
「…シュージ?」
向かいの壁に手をついて背をかがめると、僕は彼女の唇に自分のそれを合わせた。
そっと折り重ねるように、丁寧に。
香奈は特に抵抗するでもなく、ただ目を丸くした。
「痛くなくなる、おまじないだよ」
僕はそう言って、穏やかに笑みを作る。
そして、何か言い掛けた香奈に構わず、再びその唇を奪った。
椅子に座ったままの彼女を、この腕の中に閉じ込めるようにして。
何度も。
何度も。
視界の端に映ったのは、鮮明な蒼。
背の高い窓が作る、歪んだ格子模様。
その向こうに広がる、蒼い、蒼い空。
◆
「卓!これはー?」
ガラクタの山の中から手頃な板を選んで、僕は卓に声をかけた。
「おー!いい、いい!サンキュ、シュージ」
隣の部屋から顔を出した卓は、僕が抱えた古びた板に飛び付く。
「これで部室の隙間風ともおさらばだぜー」
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