【高架下から望む朱】

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「好きなお菓子は?」 「柿ピー」 眉をしかめて言葉を無くす男をちらりと見やってから、私は読んでいた雑誌に視線を戻す。 「じゃあ、好きな食べ物」 「きゃらぶき」 「…きゃらぶきって何だよ?」 「…ふきを甘辛く煮たやつ。返してよ」 取り上げられた雑誌を掴んで、私は男を睨み付けた。 「カナ…。何でお前って、そんないちいちオヤジ臭いワケ?」 「勝手でしょ」 取り返した雑誌を机に広げ頬杖をつく私の隣で、友人の愛海が派手な笑い声を上げる。 「しょーがないよー、卓。カナはオヤジじゃなくておじーちゃんなんだからー」 「ジジィかよ。じゃ、仕方ねーか」 好き勝手を言うクラスメイトに嘆息して、私は雑誌を閉じた。 「じゃあ、どんな風に答えりゃいいのよ?」 二人は顔を見合せ、それから背後を振り返る。 「なあなあ、シュージ。お前の好きなお菓子何ー?」 卓の突然の質問に、こちらに背を向けて他のクラスメイトと話していた修二は、瞳を瞬かす。 「…チョコレート」 微かに首を傾げて答える姿は、なかなかに愛らしい。 今度は愛海が質問した。 「じゃ、好きな食べ物」 「…クラシックショコラ」 「それもお菓子じゃん」 間髪入れずに突っ込んでやると、修二はこちらを振り返ってにっこりと笑う。 「カナは辛党だもんね」 「シュージは甘いもん食べ過ぎ。将来はメタボ確定だよね」
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