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「それ部室に運んでからカラオケ行くの?」
「んー。遅くなっちゃったからなー。このままカラオケ行って、明日また持ってくるわ」
くすんだ窓ガラスから入り込む日差しは傾き、夕暮れが近いことを知らせている。
僕らは影の濃くなったバリケードを越え、建物を後にした。
「やっべ、もうこんな時間?シュージまで付き合わせちまって、愛海に怒られるなー」
携帯の時間表示を見ながら、卓が苦笑いする。
僕はなるべくすまなそうな表情を作って、目の前に掌を立てた。
「ごめん。僕帰るよ」
「えっ!?カラオケはっ?お前連れてかないと愛海がキレるじゃんー!」
半べそをかく卓にもう一度謝って、僕は別れ道を自宅側に折れる。
「愛海にはメール入れて謝っとくよ」
最後にそう告げて、僕は卓に背を向けた。
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