【高架下から望む朱】

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溜め息まじりに言うと、卓は修二の背中に絡み付いて泣き真似をする。 「やっぱシュージは可愛いーなー。メタボになろーと、ハゲよーと、俺が嫁に貰ってやるからなー」 「誰がお前なんかにやるか」 お約束とばかりに、こちらに向けられた卓の背中に上履きを投げつけると、紺のブレザーに靴底の跡がついた。 「ほらなーっ。こんな凶暴でオヤジ向け格闘技雑誌なんて読んでるカナより、シュージの方が断然嫁に欲しいもんっ」 そう言ってさらに修二にすり寄る卓の背に、もう片方の上履きもぶつけると、跳ね返ったそれを拾い上げた修二がニコニコと笑う。 「ホント仲良しだね。カナと卓は」 「「仲良しじゃねーよ!」」 思わずハモってしまった私達の隣で、愛海が感心したように洩らす。 「双子なのに全然似てないよねぇ。カナとシュージくん」 「ホントホントッ!ぱっと見、雰囲気は似てんのになっ」 脱いだブレザーをバシバシと叩きながら、卓も相槌を打つ。
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