【高架下から望む朱】

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「両方に似てるよ。足して2で割ったカンジ」 「…そっかー」 何となく解せない様子の卓も、それ以上その話題は口にせず、私たちはいつもの世間話を始めた。 話の合間、愛海がこちらを見て心配そうな顔をする。 それに軽く目配せして、私は笑みを作る。 愛海は知っているのだ。 私が両親の話をしたがらないことを。 その理由と、それが修二も同じであることは、知らないだろうけど。 修二は、私みたいにその話題に取り乱したり、不安定になったりはしないから。 いつも穏やかに笑って、さりげなく私の動揺を誤魔化してくれるから。 「カナも行くでしょ?カラオケ」 そう声をかけられて、私は我に帰る。 「今日?帰りに?」 頷く愛海に、私は短く詫びた。 「ごめん。今日デート」 「「誰と!?」」 今度は愛海と卓がハモった。
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