【高架下から望む朱】

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「3年のバスケ部の人。昨日告られた」 「またかよ」 「今度はどの位もつかねー?」 「ホントにみんな、こいつの本性を知らねーよな」 「可哀相にねー」 楽しそうに他人の交際期間の予想をする二人を眺めていると、その向こうに修二の横顔が見えた。 先程までと同じように、他の友人と話している。 …いや。そうじゃない。 先程までと同じように振る舞う修二の、その表情の冷たさに私は気付き。 そして、それに気付かぬフリをした。 窓の外に広がる蒼天。 その眩しい青を見つめ、私は瞳を伏せた。 ◆ どこか物寂しい雰囲気の付きまとう、夕暮れ時。 歩き慣れた急勾配の坂道。 路肩のガードレールに腰掛けた修二は、肩を縮めて携帯をいじっていた。 「いつから居たの?」 無表情に聞けば、いつもの柔らかな笑みが返ってくる。 「早かったね。カナ」
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