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喰らい合うような、キスをする。
ただ、貪るばかりに。
列車の通過する騒音をどこか遠くに聞きながら、私は修二の首筋を掻き抱く。
漏れ出る溜め息さえ飲み込んでしまいそうな深い深い口付けに、融解していく理性を感じながら。
霞む視界の中、ふと、修二の肩越しに見えた光景に、私は目をすがめる。
高架下の闇の向こう。
生い茂る林の上に広がる空は、燃えるような朱色。
何て、美しい世界。
ああ。
私達は、二度とあの空の下には戻れない。
だって、選んでしまった。
それは遠い日の約束。
私たちはこの暗がりに生きていく。
二人きりで。
いつまでも。
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