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その顔を見た瞬間、政宗は全身の血が凍ったような錯覚に陥り、総ての思考が停止した。
両手に握っていた刀が指からスルリと滑り落ち、ガシャンと音を立てて地面に散らばった。
そんなことも構わずに政宗は目を見開いたまま、自身の付けた傷から絶えず血を流し続けている小十郎へと一歩、また一歩とユラユラ近付いていった。
「こ・・・じゅうろ?」
小十郎の傍らへとたどり着いた政宗は力無くその場で両膝をついた。
「おい、小十郎・・・何のジョークだ?ハッ!面白くないぜ、こんな・・・こんな・・・。」
政宗は小十郎の胸倉を掴むとグイグイと揺すった。
うっすらと開いていた小十郎の目がゆっくりと政宗の姿を見付けると、ふっと口元だけの微笑を浮かべた。
「ま・・・ね様・・・」
切れ切れに聞こえた耳慣れた声に政宗は急いでそちらを向くと、虫の息の小十郎の虚ろな目と視線があった。
「小十郎!!」
脇に投げ出された小十郎の左手を握り締め、政宗は小十郎の顔を覗き込んだ。
眉間に苦しそうにシワを寄せた政宗の顔を小十郎は空いている右手で撫でた。
「そのような・・・顔をされ、るな・・・。」
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