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不意に、廊下から静かな声が政宗の耳へと入った。
「政宗様、失礼いたします。」
その声は、先の夢で自分が命を絶った男、小十郎の声であった。
「・・・あぁ、入れ。」
小さく細く一息吐き出すと平素のなんともない様子を作り、政宗が入室を許可するとスーッと静かに障子が開き、男は礼をし入り再び静かに障子を閉めた。
「部屋の前を通り掛かりましたらうなされていたようなので、無礼を承知でお邪魔いたしました。」
政宗の側に正座すると小十郎は静かにそう告げた。
「・・・なんでも、ねぇ。」
顔を俯かせたままやっとのことでそういったきり口を閉ざした。
「左様でございますか。」
何か察したのか小十郎も深くは追求せずに一言だけ返すとあとは静かに政宗を見つめた。
「・・・小十郎」
「はっ、なんでございますか?」
消え入りそうなくらい小さな囁きがぽつりと政宗の口からこぼれた。
そんな小さな囁きも小十郎は聞き逃さず返事を返した。
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