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呼び掛けたきり続きを話さない政宗に変わり、口を開いたのは小十郎の方であった。
「怖い夢でも、見られましたか?」
小十郎は柔らかな声と眼差しでそう問い掛けた。
その問いに政宗はやや間を置いてから微かに頷いた。
「なるほど。それであんなにうなされていたと・・・。」
得心した小十郎も頷いた。しばしの沈黙の後、まだ微かに震えている政宗の肩を小十郎は自分の胸に抱き込んだ。
それに驚いた政宗は目を大きく見開き、小十郎を見上げた。
「こ、じゅ・・・ろ?」
「政宗様、寝付くまでこの小十郎お側におりましょう。」
政宗の見上げた目と小十郎の柔らかな眼差しが互いに絡み合った。
幼い頃によくこんな目でぐずる自分を宥めて、優しく寝かしつけてくれたことをふと思いだした。
その優しい目と胸の温もりに政宗は思わず涙を一筋流していた。
「政宗様・・・大丈夫、何も怖いことなどありはしない。」
そう優しく諭され、流れ出し涙を指ですっと拭われた。
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