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ヤーナは隠し通せる訳もないと悟って仲間に全て話した。仲間たちは皆驚いた顔をし、戸惑っている様だったが、一様にこれからどうすると彼女に聞いた。頭が戦えない状態で海に出ているのは危険だ。戦の女神海賊団は敵も多い。
「お前たち、すまないが一先ず噂が立たぬうちに雲隠れしようとおもう。本当に申し訳ない。どこへ行くのがいいと思う」
様々な案が出た。ロニアンドへ戻ろうという者、南へ無人島を探しに行こうという者、このままで平気だという者もいた。
「だが、頭がこの様ではな」
「平気だ。気をつけて海域を選べばいい」
タキがいう。周りも同感だった。血の気が多い若者たちをどこかに篭めるのは哀れだ。訓練を終えて正規の仲間になったばかりの者も何人かいる。
「ヤーナ、何か船が来る」
船上に緊張が走った。この海域には中小の海賊が犇めいている。その先は南海最強と名高い猛獣、バルコー率いるゾディーク海賊団の縄張りだ。総数では戦の女神海賊団の方が頭数は多いが、海賊団としてはかなりの新参者。ゾディークのような古株の海賊団は何かにつけて新参者に難癖をつけ、気に入らなければ襲って来ることさえある。戦の女神は何度と無くゾディークと戦火を交えていた。
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