スフィソニアンの国

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 朱塗りの船体はなめらかな曲線を描き、船首は軍神ヴィーシェの化身である黒い獅子。この船の主の正体を知った戦の女神海賊団は恐慌状態になった。 「スフィソニアンの姉様たちだ。久しぶりだな」 ヤーナは落ち着け、と叱り飛ばし、失礼がないように大人しくさせた。 「あれはアラスールの船ではないな。マクシミア大姉様だ。彼女が動くとはどういうことだろう」  スフィソニアンの船団は戦の女神の船団を包囲した後、彼女らの長マクシミアが現れた。片耳のマクシミア。彼女は海賊の間でそう呼ばれ恐れられている。スフィソニアンの特徴である猫に似た三角耳が片方しかないのだ。赤毛の豪華な巻き毛の中に半分埋もれた耳。  なくなった片方は自ら切り取って崇拝するヴィーシェの祭壇に捧げたのだという。ヤーナとほぼ同じ長身、彼女を圧倒する威厳に満ちた物腰、尊大な目つきは美しい顔立ちを高雅に引き立てる。美人が多いスフィソニアンの中でも指折りだ。そして、ヤーナの恋人でもある。 「マクシミア、なぜ……」 「お黙り、ヤーナ。三日前、神殿の巫女より神託があってな。ヴェルカン様よりお前が困っているようだから助けよ、と」
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