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軍神ヴィーシェ、その化身ヴェルカン。ヤーナを愛し、愛ゆえに彼女をアレーに託した。彼がスフィソニアンを呼んだという。ヤーナは天を仰いで彼に感謝した。ヴィーシェに愛でられるスフィソニアンの領海には、海賊も海軍も手出ししない。
「ヴィーシェの御計らいに感謝せよ。なにゆえ、お前は困っている」
「ああ。自分でもどうしてよいやら……。私の部屋で話そう。貴女が愛してやまない五十年物の葡萄酒がある。西の海のものだぞ」
スフィソニアンたちは次々と戦の女神の船団に乗り込んできて大喜びしている。好みの男を品定めしているに違いない。妙齢のスフィソニアンは常に子供の父親を探している。ヤーナはその様子を眺めて笑った。久しぶりに笑ったような気がする。
「船員に手を出さないでおくれ。妻子持ちには特に。私が残してきた彼らの妻たちに袋だたきにされてしまう」
マクシミアは後ろを振り向いて仲間に一喝した。スフィソニアンたちはがっかりした様子だったが、大人しく談笑するに留める。
「分かった、分かった。男狩りの期間はもう終わっている。安心せよ、お前の男たちには手を出さん」
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