スフィソニアンの国

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 正式にはラ・リーレ・マクシミア・ジョゼー。ラは八姉妹の、リーレは女王の称号だ。ヤーナが十六、七の頃だったか。マクシミアと出会ったのは全くの新参者だった戦の女神の最初の敗北でもあった。だが、マクシミアはヤーナの不敵さをえらく気に入って強制的に国へ連れ帰った。  ヴィーシェの寵を得たのもその頃で、恐らくはスフィソニアンの祭壇で姉妹の契りを交わしたときに見初められたのであろう。ヴィーシェはスフィソニアンの忠誠と、狂暴な性質を甚く愛で、常に共にある。 「アラスールはどうしている」 「ああ。あの子はお前が男に心を奪われたと知るや怒り狂ってな、以来国に寄り付かなくなってしまった。信じたくないらしい」 スフィソニアンの長ジョゼー族八姉妹の末妹、アラスールもヤーナの恋人の一人。八姉妹の中でもマクシミアの次に気性が荒い。 「スフィソニアン以外を愛する者の宿命よ、致し方ないこと。あの子のことは我々一族の問題だ。で、困っていることというのは」 ヤーナは今の状況を全て話した。二人は姉妹の契りを交わした者同士。 「そうであったか。お前が男を愛したと聞いて、私もお前を殺しに行こうと魔が差した。行かなくて良かったと思っているが」
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