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戦の女神海賊団に突然の悲報が齎されたのは夕暮れ時だった。ヤーナはロニアンドからの知らせの手紙に目を通すなり青ざめ、タキに支えられなければ崩れ落ちていた。訳の分からない仲間たち。ヘラがヤーナから手紙を引ったくって読み上げる。コーランの生真面目な字。だが、酷く取り乱したような走り書きになっている。
「『ヤーナ、ムーナルンドが今朝カーター砦を襲った。抵抗したようだが、殲滅されたらしい。住民は皆殺しだ。アレー一人が生け捕りにされ、ムーナルンド軍部で拷問を受けている。生きているのか、死んでいるのかも分からない。私とオニスはヴァルージアン殿下に直訴して助命を試みているが、可能性は低い……』」
あとの文面は塩水にやられていて読めない。ヘラの言葉は尻つぼみになる。
「ヤーナ、コーランとオニスがしっかりやってくれるさ。あの二人ならヴァルージアン皇子を動かせる」
イザは慰めるように言ったが、ヤーナは無表情のまま硬直している。
「でも、ヴァルージアン皇子はラーマ帝の嫌われ者の息子だろう。おっかない親父さんの心が動くかね」
モーセはイザとヘラに激しく睨まれた。ヤーナはさらに打ちのめされてしまったようで、タキに半分抱き抱えられている様子だ。
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