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ヤーナは部屋に篭った。アレーが死んでしまった。たった三ヶ月の蜜月。初めて本気で恋に落ち、愛し合った僅かな期間。次に会う時、それは二度と、二人は永遠に離れない。そう誓ったはずだった。手紙が書かれたのは一週間前。一週間も拷問に堪えられるとは考えにくい。彼は死んでしまった。
「ヤーナ、皆準備している。ムーナルンドへ助けに行こうって」
外からヘラは訴えた。無駄だと分かっても、助けに行かなければならない。自分達のヤーナが壊れてしまう。アレーにはそれだけの借りがあるし、砦の人々の無念も晴らしてやりたい。血気盛んな海賊たちは奮起していた。ヤーナは慌てて部屋を飛び出していく。
「やめよ、お前たち。死んだと決まった訳ではないのだ。コーランからの返信を待て。ムーナルンドは強大過ぎる。我らに太刀打ちできる相手ではない。死んだ者のためにさらに死者を増やすことが本当に弔いか。よくよく考えよ。私のために誰一人として死なせることはしない。とにかく返信を待て。こら、タキ。その物騒な物を全部片付けておけ。分かったな」
タキは不満そうな顔をしたが、積み重ねた爆薬と砲弾をすごすごと片付けた。
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