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数日後、戦の女神海賊団はロニアンドに入った。手紙は検閲が入る可能性が高く、コーランから直接会いたいとの連絡があったのだ。ヤーナは悶々として居ても立ってもいられなかった。目立たないように最初はヤーナだけが待ち合わせの宿へ向かった。
庶民向けの小さな宿は平民たちで溢れていた。大国では珍しく、ロニアンドには奴隷がいない。ロニアンド王家の始祖はブラキオス人の軍人だといわれ、王家は頑なに奴隷貿易を拒みつづけている。このこともあり、ヤーナはこの国を好いており、一区画を借りて仲間の家族を住まわせている。
宿のカウンター席に若い武官が座っている。黒に深緑の縁取り、金糸で刺繍が施された上着。深緑のズボン。下後頭部に纏められた髪型。初々しい若者が二人、主人と談笑している。
「ヤーナ……」
二人の笑顔は彼女を見た途端に消えた。
「上に部屋を取ったからそこで」
コーランとオニスは二年ぶりにヤーナと会った。だが、心は常に戦の女神と共にある。体に彫った小さな蜘蛛の入れ墨は、危うく入隊試験に落ちるところだった。
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