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数日後、戦の女神海賊団は果てしない海洋の中をあてどなく漂っていた。ヤーナがアレーを助けられない無力感に気を病み、ヘラやイザさえなかなか顔を合わせようとしない。
「くそ」
ヤーナは体調も悪く、朝から嘔吐を繰り返していた。彼女が風邪を引いたのは遥か前、船酔い一つしたことがない。
「ヤーナ。入るよ。皆、指示が無くて困ってるんだけど。タキが機嫌の悪い奴らをのしちゃってさ、そのあと大喧嘩で怪我人が出てる。タキがぶちのめしたからなんだけど。お願いだから、出てきて」
ヘラは激怒されるのを承知で押し入った。ヤーナは追い返す気力もなく、寝台に崩れ落ちていた。
「ヤーナ、どうしたのさ。調子が悪いならあたしに言ってくれれば」
ヤーナは何も答えなかった。彼女は今、一つの可能性に震撼していた。認めるのも恐ろしく、考えることも厭わしく、自分にはどこか有り得ないと思っていたことだった。
「ヘラ。皆、これが事実だとしたら私を見限るだろうな」
「何のことだい」
「あの小癪な男が私に土産を残したらしい」
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